欧州のローン担保証券(CLO)は2022年における最も魅力的な投資先の1つ
今年は、市場のボラティリティが高まる局面があり、欧州のローン担保証券(CLO)も例外ではありませんでしたが、CLOのファンダメンタルズと価格は非常に安定していました。2021年におけるもう一つの注目すべき動きとしては、ESG要素を組み込んだCLOが増加したことが挙げられます。ほとんどのCLO案件では現在、いわゆる「罪ある業種」を組み入れ銘柄から除外する規定を設けており、ESGデータを比較的容易に入手することが可能となっています(ただし、データ・アクセスを改善する余地もある)。
2021年初めの時点で、当社はCLOの発行額が過去2年間と比べてやや増加すると予想していました。また、一部のCLO案件が償還を迎えつつあったことから、CLOの借り換えも増加すると予想しました。実際に、2021年にはそうした傾向が見られましたが、CLOの発行額を正確に予想することはできませんでした。11月末時点の年初来で、CLOの純新規発行額は360億ユーロに達しており、欧州のCLO市場の規模は前年同期比で約20%拡大しました。さらに、CLOの借り換えは580億ユーロとなり、年初来の新規発行総額は940億ユーロに達しました。
何年か前には、CLOは欧州の資産担保証券(ABS)市場のごく一部を占めるに過ぎませんでしたが、現在では3分の1以上を占めるまでに成長しています。したがって、CLOは無視できない資産クラスとなっており、流動性も年々改善しています。現在では、ほとんどの投資銀行がCLOに精通した専門のトレーダーを配置しており、バランスシート上にCLOの項目を設けています。その一方で、市場規模拡大による弊害も生じています。CLO市場の規模は2021年に大きく拡大したものの、投資家の需要がこれに追いついていません。その結果、発行されたCLOが市場で十分に消化されず、スプレッドが拡大するケースもありました。今年に入ってから、欧州のAAA格CLO債券の利回りは0.78%~1.06%のレンジで推移しています。夏以降、スプレッドはやや縮小しましたが、それでもレンジの上限付近である1%前後で推移しています。
1%はそれほど高い利回りではないように思われますが、これは変動金利のAAA格の資産であることを忘れてはいけません。市場では、景気回復、インフレ圧力、金利上昇などが注目されていますが、依然として低金利環境が続いていることは事実です。例えば、バンクオブアメリカ・メリルリンチ・ユーロ建て非金融指数(デュレーションは5.9年、平均格付けはBBB+、利回りは0.5%)と比較すると、欧州のAAA格のCLOが提供する1%の利回りは非常に魅力的であるように思われます。では、AAA格のCLOの利回りがBBB格の社債の利回りよりも高いのはなぜでしょうか?これは、CLOの構造が複雑であり、投資家が上乗せ金利を求めていることが一因であると見られます。しかし、本当の理由は、欧州中央銀行(ECB)がCLOを資産買い入れの対象に含めていないためであると考えられます。
資本構成の中で弁済順位が低い証券を見ると、例えばBBB格やBB格の証券のスプレッドも今年に入ってから50~75bps拡大しています。AAA格の証券と同様に、これらの証券のスプレッドも2021年のレンジの上限付近で推移しており、BBB格は300~375bp、BB格は575~650bpとなっています。しかし、ユーロ建てのBBB格証券とBB格証券の直接利回りがそれぞれ3.5%、6.2%であり、これらは非常に健全な直接利回りであるため、市場のボラティリティがある程度高まったとしても、トータル・リターンがマイナスになるリスクは低いと言えます。CLOのスプレッドは今年に入ってからやや拡大しましたが、投資家の観点からすると、償還が近いCLOの借り換えが増加したことにより、多少のキャピタル・ゲインが発生し、これによりスプレッド拡大の影響が相殺されています。その結果、CLOは2021年において最もパフォーマンスの高い債券資産クラスの1つとなっています。
CLOの裏付けとなるレバレッジド・ローンの信用力を見ると、今年に入ってから格上げが相次いでおり、期限前償還が増えています(M&A市場が活発であるため)。また、欧州ではレバレッジド・ローンのデフォルト率が1%を下回っています。2020年1~3月期にパンデミックが発生した際には、経済への深刻な影響が懸念されたため、レバレッジド・ローンについて基本シナリオとストレス・シナリオの両方を想定する必要がありました。レバレッジド・ローンは、新型コロナウイルス発生直後の急落から値を戻しており、当時はこうした展開を予想することはできませんでした。CLOは、債券保有者への支払いに影響を与えることなく、ストレスやボラティリティの高まる局面を乗り切れるように構築されています。世界金融危機や新型コロナウイルスのパンデミックが発生した中でも、CLOは底堅いパフォーマンスを示しています。
2022年の見通しはどうでしょうか?ここ最近でM&A活動が活発化していることを踏まえると、2022年上半期はCLOの新規発行市場が非常に魅力的な投資先になると考えられます。BB格とB格のCLOのスプレッドは現在、比較的拡大した水準(利回りはそれぞれ6.2%と9.2%)となっていますが、スプレッドがここから大幅に縮小する可能性は低いと見られます。ただし、金利上昇が続けば、変動金利資産(特に、投資適格の資産)に対する需要も増加する可能性があり、CLOは魅力的な投資機会を提供すると考えられます。2022年全体を見ると、ボラティリティが高まると予想されるため、投資のタイミングが重要となります。しかし、2022年末にかけて、資本構成全体にわたりスプレッドがやや縮小する可能性があり、安定したクーポン収入を確保できると予想されます。
今後12ヵ月にわたりデフォルト率が低水準で推移すると見込まれます。また、利回りを求める動きが続いており、CLOはデュレーションが短いことなどを踏まえると、2022年にはCLOが最も魅力的な投資先の1つになると考えられます。変動金利ユニバースにおいて、CLOは最も高いリスク調整後リターンを提供すると予想されます。
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